入院をして
- ycgogo
- 51 分前
- 読了時間: 4分

Yです。高校一年生の時に盲腸で入院した事があります。私小説風に書いてみました。
それは、予期せぬ瞬間に訪れた「大人」への入り口だった。
高校1年の夏、私の日常は唐突な腹痛によって断絶された。放課後の校舎に響く蝉時雨さえ遠のくほどの激痛。診断は急性虫垂炎、いわゆる「盲腸」だった。そのまま救急車で運ばれ、気づけば私は無機質な病院のベッドの上に横たわっていた。
手術前の準備として、枕元に現れたのは一人の若い看護師だった。当時の看護師は、今のような機能的なパンツスタイルではない。糊のきいた真っ白なワンピース。彼女は布団をめくると、穏やかな微笑みを浮かべて言った。
「多分知ってると思うけど、ヘヤーを剃らないといけないの。少し恥ずかしいかもしれないけど、我慢してね」
多感な時期の私にとって、それは一生を左右するほどの一大事だった。母親以外の女性に秘部を触れられる経験などあるはずもない。顔から火が出るほどの羞恥心。しかし、彼女が屈み込んだ瞬間、私はあるものに釘付けになった。白衣の薄い生地の向こう側に、うっすらと、しかし確かにスリップのレースが透けて見えたのだ。「母親以外の女性が着ている本物のスリップを拝みたい」という密かな夢。まさかこんな切羽詰まった状況で叶うとは。しかし、激痛と羞恥がそれを味わう余裕を奪い、私はただ脂汗を流しながら、その聖域を網膜に焼き付けるのが精一杯だった。

手術室に入ると、独特の消毒液の匂いが鼻を突いた。局部麻酔のため、下半身の感覚はまったくないが、意識だけは冴え渡っている。執刀医の声と、器具が触れ合う金属音が、どこか遠くの出来事のように響いていた。
あの看護師さんは、私の頭の後ろ側に立ってくれていた。
「今、順調に進んでいますからね。大丈夫ですよ」
彼女は時折、経過を説明しながら私を勇気づけてくれた。どこか冷静になった私の脳裏に、彼女の存在が香りで伝わってきた。石鹸の清廉さと、糊のきいた清潔な白衣の匂い。そして、その奥にうっすらと混じった、女性特有の甘く柔らかな体温の匂い。
つい先ほど、彼女にすべてをさらけ出し、その繊細な指先で触れられたこと。そして今、姿は見えずともすぐ傍らで自分を守るように声をかけてくれていること。鼻腔をくすぐる彼女の香りと、脳裏に焼き付いたあのスリップのレースの残像が重なり合い、私の胸の内には、苦しさとは別の熱い震えが湧き上がっていた。
それは、痛みと羞恥の極限で見つけた、切なくも確かな「恋心」のようなものだった。
手術は無事に終わったものの、術後にはさらなる試練が待っていた。

傷口が膀胱を圧迫し自力で用を足せず、急遽カテーテルによる導尿が行われることになったのだ。
「少し痛みますよ、リラックスして」
処置にあたったのは、またしてもあの看護師だった。彼女の指が、迷いなく私の「それ」を掴む。至近距離で再び目にする、白衣の下のスリップのレース。羞恥と痛み、そして目の前の艶やかな透け感が混濁し、理性に反して身体が正直な反応を見せてしまった。
「あら、元気ね。若いから仕方ないわね。でも、少しだけ我慢してね。そうしないと、カテーテルが入らないから……」
彼女の手にしっかりと自分の熱を握られているという状況。情けないほど恥ずかしい。けれど、どこか甘美で嬉しいような、不思議な感情が胸を締め付けた。
二日後、カテーテルを抜く日がやってきた。
彼女は慎重に管を引き抜くと、そっと手を離し、私の「それ」を丁寧に下着の中へと収めた。
「よく頑張ったわね。もう大丈夫。これからはゆっくり立って、自分でトイレに行くのよ」
そう言いながら、彼女は励ますように、パンツの上から私の「そこ」を優しく「ポン」と叩いた。その弾むような感触。彼女が立ち上がり、背を向けて歩き出した瞬間、陽光に照らされた白衣の向こうに、再びあのスリップのレースが影絵のように浮かび上がった。
去っていく後ろ姿を見送りながら、私の「それ」は再び誇らしげに元気を盛り返していた。痛みと羞恥、そして初めて触れた異性の包容力

カテーテルが抜け、少し歩けるようになると、私は「用もないのに」ナースステーションの方へ足を向けるようになった。「歩けるならゆっくり歩いた方がいい」という医師の言葉を建前に、心の中ではただ一人の面影を追いかけていた。
交代勤務のため、いつも会えるわけではない。それでも、廊下ですれ違ったり、ステーション越しに数言言葉を交わしたりする時間が、退院を控えた私の至福のひとときだった。彼女に悟られないよう細心の注意を払いながら、私はいつも、その白いワンピースの下を意識して確認していた。そこにはいつも、あの時と変わらぬ繊細なレースの縁取りが、静かな誇りのように透けて見えていた。

痛みを知り、羞恥を越え、そして初めて異性の包容力に触れた一週間。
彼女は単なる医療従事者ではなく、私の少年期の終わりを優しく導いてくれた「白衣の天使」そのものだった。
退院の日、病院の玄関を出て見上げた空は、入院前よりも少しだけ違った色に見えた。それは、石鹸の香りと白いレースの記憶とともに刻まれた、夏の日の自叙伝である。



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