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ピンクのスリップを見た日

  • ycgogo
  • 14 分前
  • 読了時間: 6分

Yです。Cと付き合って、ピンクのスリップを着てもらった時の事は以前お話しをしました。

幼い頃からの記憶を思い返すと、ピンクのスリップを見た事が何度かあり、それが強く記憶に刻まれたのがわかります。

初めて意識をしたのは、父が家に置いていた雑誌。そのグラビアに誰か忘れましたが、女優の人がピンクのスリップを着ていました。当時はまだスリップを着ている人は日常に居ましたが、それでも圧倒的に白が主流でした。私がわからないだけで、実際に服の下にピンクや色のついたスリップを着た人は居たのかもしれません。でも、洗濯物で干してあるスリップを見ることがあってもやはり白かベージュでした。

それまで、私が目にすることができるスリップは母

親のか、学校で女子のセーラー服の間からチラッと見える物しか縁がなく、白以外は見た事がありませんでした。そのためグラビアとはいえピンクのスリップは私の中に強烈に植えつけられたのです。

雑誌のグラビアで見たあの「ピンク」は、私にとって手の届かない異世界の象徴でした。しかし、その色が、ある日突然、私の日常の風景の中に迷い込んできたことがあったのです。

それは、中学の登下校路での出来事でした。

通学路の大きな横断歩道には、毎朝、黄色い旗を持って立ってくれている近所のおばさんがいました。子供の目から見ても、彼女はどこにでもいる「普通のおばさん」でした。いつも白いブラウスを着て、私たちの安全を守る存在。ただ、彼女の背中越しに見える服のラインからは、確かにスリップを着ていることは分かりましたが、それは当然、白かベージュなのだと疑いもしませんでした。

そんなある日の登校中、ふと、一軒の家の庭先に干された洗濯物が目に飛び込んできました。

生垣越しに揺れていたのは、見覚えのある「白」ではありませんでした。朝の柔らかな光を

浴びて、それは確かに、あの雑誌で見たような鮮やかなピンク色をしていたのです。

「あんな色のスリップを着る人が、この近所にいるんだ」

私は言いようのない衝撃を受けました。それからというもの、その家の前を通るたびに、無意識に洗濯物を確認するのが日課になりました。けれど、ピンクのスリップが干されている日はなかなか訪れません。幻だったのかと思い始めた頃、私はついに「その人」を目撃することになります。

その家の門をくぐり、玄関へと入っていく後ろ姿。

それは、毎朝横断歩道で黄色い旗を振っていた、あのおばさんでした。

日常の象徴だった彼女と、生垣の向こうで揺れていた非日常のピンク。

その二つが頭の中で重なった瞬間、私はひどく動揺したのを覚えています。いつも事務的に「おはよう」と声をかけてくるおばさんの、服の下にある「秘密」を覗き見てしまったような、あるいは、大人の女性が持つ多面性に触れてしまったような、不思議な昂ぶりでした。

それでも、その後も彼女のピンクのスリップが干されているところを見たのは数えるほどでした。

でも、そのたびに私は確信したのです。白やベージュが当たり前の世界で、人知れず自分の

好きな色を身に纏っている人がいる。誰に見せるためでもなく、服の下に「自分だけの色彩」を隠し持っている。

その記憶が、私の中に「ピンクのスリップ」という存在を、単なる憧れ以上の、特別な美学として決定づけたのでした。


その家の主を知ってしまった以上、もう以前と同じ気持ちで横断歩道を渡ることはできませんでした。私は、胸の奥で暴れる好奇心を抑えきれず、ある朝ついに、自分から彼女に声をかけてみることにしたのです。

「おはようございます」

精一杯、不自然にならないように絞り出した声。彼女はいつものように、黄色い旗を軽く振りながら「おはよう、気をつけて行くんだよ」と、穏やかな笑顔を返してくれました。

その瞬間、私の視線は彼女の首元や背中に釘付けになっていました。けれどその日の彼女の服の下から覗くのは、やはり見慣れた「白」でした。

それからというもの、私の通学路は、彼女のスリップを確認するための「答え合わせ」の時間へと変わりました。

「今日は何色だろう」「あのピンクは、いつ着るんだろう」


そんなことばかりを考えていました。毎日顔を合わせ、言葉を交わすたびに、私と彼女の間には(少なくとも私の中だけでは)、言葉にできない不思議な親密さが生まれていきました。彼女にとってはただの中学生との挨拶でも、私にとっては、彼女の隠された一面を探り当てるための、密かな儀式だったのです。

そして、その日は突然やってきました。

雲ひとつない晴天の日、初夏の強い光が差し込んでいた朝のことです。

いつもの横断歩道。黄色い旗を手に立つ彼女の後ろ姿を見た瞬間、私の心臓は跳ね上がりました。

彼女が着ていた薄手の白いブラウス越しに、透けて見えたのは、間違いなくあの鮮烈な「ピンク」でした。

庭先に干されていた時よりも、ずっと艶やかに、そして生々しく。彼女が動いて旗を振るたびに、ブラウスの下でその色が踊ります。それは白一色の退屈な通学路の中で、そこだけが別の熱を持っているかのように眩しく映りました。

私は息を呑み、足がすくむ思いでした。

「おはよう」

そう言ってこちらを向いた彼女は、自分が何を纏っているかなど微塵も気にしていない様子

で、いつも通りの優しい「近所のおばさん」の顔をしていました。

それは、若い娘が纏うような、弾けるようなピンクの爽やかさとは無縁のものでした。

彼女が旗を振るたびに、ブラウスの袖口から、あるいはうなじから、ふわりと漂ってくる匂い。それは夏の熱気に蒸され、彼女の体温と混じり合った、成熟した女性特有の重みのある香りでした。石鹸の残り香の裏側に潜む、成熟したフェロモンのような、肌そのものの匂い……。

「おはよう。今日も暑いね」

そう言って微笑む彼女のブラウスの下で、あのピンク色のスリップは間違いなく彼女の湿った肌に吸い付いているはずだ。私はそう確信し、息が詰まるような感覚に陥りました。

そのピンクは、彼女の「成熟」をより生々しく、より秘めやかに強調していました。

学校に着いてからも、私の感覚はあの横断歩道に取り残されたままでした。

セミの鳴き声がうるさく響く教室。黒板を叩くチョークの乾いた音も、教師の単調な語りも、すべてが遠い世界の出来事のように感じられました。

ノートの隅に目を落とせば、そこに浮かんでくるのは教科書の文字ではなく、逆光の中でブラウスを透かして見えた、あの滑らかなピンクの曲線でした。

(今、彼女は家に戻って、あのスリップ一枚で過ごしているのだろうか、あのピンクの薄い生地は、彼女の豊かな肌の上でどんな風に滑り、どんな風に体温を吸い込んでいるのだろうか)

そんな想像が頭をもたげるたびに、喉の奥がヒリつき、下腹部に重い違和感が溜まっていきます。

窓から入ってくる風はちっとも涼しくなく、むしろ彼女の体温を運んできたかのように湿っぽく、私の制服の襟元を濡らしました。

周囲の同級生たちがまだ「子供」の顔をして授業を受けている中で、自分だけが、あのおばさんと「秘密の色」を共有してしまった。その優越感と、それ以上に抗いがたい、成熟した肉体への恐れにも似た憧憬。

あの日の授業の内容は、何一つとして記憶に残っていません。

ただ、私の脳裏には、夏の湿り気とともに、あの熟れたピンク色の幻影が、呪縛のように、けれど甘美に居座り続けていたのです。

 
 
 

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