• ycgogo

手すりにかけられた白いスリップ

今回も、私Yが自らの思い出として語ります。お楽しみいただければと思います。

これは、まだ私が中学の時の話です。

夏のある日、仲が良い友人が数人おりました。その中でも一人ちょっと、喧嘩が強く私はどちらかといえば私が羨ましく思っている友人がおりました。

その友人は小さなアパートに家族で住んでいるということは聞いていましたが、その彼の家には行ったことはありませんでした。ある日、たまたまその彼の家に彼を迎えに行くことになりました。

確かにアパートで彼の家は2階でした。そのアパートはよく言えば庶民的、悪く言えばあまり所得水準が高くない人が住んでいる感じのアパートでした。

彼の家まで行き、彼を呼びだしましたが、まだ準備ができておらずしばらく外で待つ羽目に。

その間、周りを見回すと、多くの家が家の前の通路の手すりに洗濯物を干してありました。多くは、バスタオルであったり、シーツを広げてかけて干してあったりでした。もちろん、各家にはベランダもあり、洗濯物はそこに干せるようになっているのですが、それだけでは足りないのか、玄関前の通路の手すりは自分の家のスペースとばかり洗濯物が干されています。

私は時間を持て余し、彼の家の両隣の通路を行ったり来たりしてました。そんな時、彼の家の2件隣の家の前で立ち止まってしまいました。その通路にはなんと真っ白なスリップがかけて干されていました。私の胸は突然高まってしまいましたが、幸い周りに誰もいませんので、近くによってじっと見つめてしまいました。そのスリップは真っ白いナイロンで、洗い立てのようでまだ濡れていました。ベランダの物干しがいっぱいだったのでしょうか?そんな人が通るところに干してあること自体が信じら

れません。そんな事よりも、自分の目の前に、真っ白いスリップがある、それも手が届くところに。そして、それはなによりも母以外の女性のスリップである。私の心の中はものすごい感情が葛藤していました。今誰も見ていない、触れてみよう、いや今だったら持って帰ってもわからない、そんな気持ちが自分の中でぐるぐると渦まいていました。自分として、ずいぶん時間がたったような気がしましたが、実際には短い時間だったのでしょう。でも、こんなに近くで母以外のスリップを目にする、それもまぶしいくらいに真っ白のスリップ。「どんな人が着てるんだろうか」次に頭のなかを巡ったのは、そういうことでした。その瞬間、別の部屋のドアが開き、友人が顔をだしました。「おー、またせたね」「いや、大したことないよ」などと、できるだけ友人には気づかれないようにふるまいました。しばらく、そこから立ち去りたくない気分でしたが仕方がありません。

「行こう」という声に促されて、動き始め、階段をおり、それでもあきらめきれない気分で、さっきの場所を見上げてみたら、ドアが開き、ちょうど30歳になるかならないくらいの女性がこどもを抱いてでてきた。髪の長い少し綺麗な顔立ちの女性。その顔をみた瞬間、私の頭の中は、さっきの白いスリップを着たその人の姿でした。


それから、なんどか機会を作ってその友人に会いに行きました。本当の目的はもちろん、ひょっとしてまたそこにスリップが干してないかということでしたが、残念ながら二度とそんな機会にはお目にかかれませんでした。

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